さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 長い睫毛の下から優しそうな目が覗いている。

 彼の瞳にあたしの姿が映っているのを確認したとき、彼は目を細めた。

 ゆっくりと立ち上がると、頭を下げた。

 身長はあたしより頭一つ分ほど高い。

 尚志さんとおなじくらいだろうか。

「初めまして」

 優しく、なだめるような声だと思った。

 でも、千春同様、よく通る声だと思った。

 綺麗な人だとも思った。

「どう?」

 あたしの視野の隅で面白そうに覗き込む千春の姿があった。

 でもあたしは千春を見る余裕がない。

 彼の瞳にあたしの姿があって、ただどうしていいのか分からなくなった。

 ただ分かったこと。

 それはあたしにはつりあわない人だということだった。
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