さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 通った鼻筋、男の人にしてはふっくらとした唇。その唇は血色がいいのか赤かった。

 その肌も肌荒れとは程遠そうな綺麗な肌をしていた。

 大きな二重の瞳に、長い睫毛。人形のような人だと思った。

 でもどこかで会ったことがあるような気がした。

「初めまして」

 あたしは自分の声が上ずるのが分かった。

 彼の姿はあたしの脳裏に焼きついていた。

 彼は眉間にしわを寄せ、あたしを見た。

 まじまじと見られると緊張してしまう。

「君、昨日大学にいなかった?」

「大学?」

 千春は眉間にしわを寄せ、あたしを見る。

 あたしは彼とどこで会ったのか思い出していたのだ。

 あたしが泣いていたときに話しかけた人だった。
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