さよなら、もう一人のわたし （修正前）

「気のせいですよ」

　あたしはそう強く言う。

　さすがに尚志さんを見に大学に行き、女の子と楽しそうにしている彼を見て泣いていたときに出会った人だとは説明できなかったのだ。

　彼は何かを感じ取ったのか、あたしの言葉を信じたのかは分からないが、それ以上何も言わなかった。

「そうだね」

　あたしは彼の言葉に胸を撫で下ろす。

　千春が興味深そうにあたしと彼を見ている。

　あたしは彼に促されて椅子に座る。その隣に千春が座った。

「どうぞ」

　彼はあたしと千春のちょうど中間にメニューを差し出した。あたしは思わずオムライスを探す。しかし、さすがにまだ夕食には早い時間だった。

「あたしはコーヒー」

　千春は即決すると彼に話しかけていた。