さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「だめだったら留年しようかと思っているから。それに大丈夫だよ。監督もできるだけスケジュールは合わせるからって」

 あたしもそんなことは言われた。しかし、学費の問題は結構大きい。

 あたしが黙ったことに気を使ったのだろうか。彼は口を開く。

「君は受験生だよね? 大学は?」

「あたしは今年は受験しないでおこうかなと思っていて。留年したらもったいないし」

「確かにね。学費はただではないし」

 そのとき千春は何かを思い出したかのように口を開いた。

「でも、康ちゃんと京香の志望学科って同じでしょう? なら教えてもらえば京香も大学に行けそうだよね」

「そうなんだ。ノートとかなら貸してあげるよ。一年で変わらないだろうし」

「でも」

 決めたはずだったのに、心が揺らぐ。
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