さよなら、もう一人のわたし （修正前）

　いつもはしっかりしている彼女がそんな砕けたような表情をするのは兄以外に見たことがない。

　あたしは千春と友達でいたとしても、彼女の交友関係などは全く知らなかったのだ。

　昨日、弘に無責任なことを言わなければよかったと思っていた。



　そのとき、甲高い携帯の音楽が鳴り響く。

　千春の携帯だった。

　彼女は携帯を取ると、言葉を交わす。

「そうそう。今、康ちゃんと会っているの。京香も一緒だよ。……分かった」

　彼女は電話を切ると、肩をすくめた。

「ごめん。ちょっと家に帰らないと」

「お兄さんから？」

　何気ない言葉だったのだろう。

　杉田さんがそう言った。

　千春の顔が一瞬強張る。

　そして、彼女は思わずあたしを見た。