さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 彼はあたしを見ると言葉を続けた。

「ビデオ見たいなら見てもいいよ」

「一つ聞いていいですか?」

「何?」

「どうしてこの家にはこんなに昔の映画があるんですか?」

「いろんな理由があるけど、簡単に言えば父親の趣味かな」

「お父さん?」

 尚志さんは頷く。

「今、どこで何をしているか分からないけど、映画が好きな人だったから」
 彼の瞳に悲しみが映るのが分かった。

 あたしはそれ以上何も言えなくなる。

 他にも聞きたいことはあったのに、彼の瞳に打ち止めをされてしまった感じだった。

「おまたせ」
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