さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「いることはいるよ」

「誰?」

「秘密」

 彼はそう言うと、それ以上は教えてくれなかった。

 それは大学の人なのだろうか。

「その人をデートに誘ったりはしなかったの?」

 恋人同士がすごす日にあたしたちは一緒にいた。

 それは彼があたしの練習に付き合ってくれていたからだ。

「多分断られるから」

「そうなんだ」

 あたしは自分で聞いたくせに、それ以上何も言うことができなかった。

 あたしはどんな答えを期待していたのだろう。

 そんなことさえも分からなかった。

「君は?」

 彼は何かに気づいたように言葉を続けた。

「ごめん。えっと平井さんは?」

「もう大丈夫ですよ。君だろうが、あなただろうが何でも」

 あれからもう長い時間が過ぎた。
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