さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 長いような重苦しい時間が流れた。

 でもその時間はほんの一瞬だったのかもしれない。

 そのとき信号機が音楽を奏でだす。

 尚志さんの体が大きく震え、彼はあたしを見た。

 そのときの彼の表情は皮肉っぽい笑みを浮かべていた。

 あたしのことを嫌いだと告げるようなその瞳を見て、あたしは彼を見たことを公開していた。

 見なきゃよかった。

「知り合い?」

 杉田さんはあたしの顔を覗きこむ。

 彼は尚志さんとは直接面識がないらしいので無理はない。

 あたしは頷くだけで何も言えなかった。

「ねえ、あの子って」

 彼と一緒にいた女性があたしを指差す。

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