さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 でも現実は違う。

 あたしは尚志さんを見た。

 自分がどんな顔をしていたかは分からない。

 でも暗い顔だったと思う。悲しい顔もしていたかもしれない。

 彼は皮肉っぽい笑みを浮かべている。

 いつから彼はあたしにそんな表情を浮かべるようになったのだろう。

 あのときのようにあたしに微笑みかけてはくれないのだろうか。

 尚志さんは無表情のまま背を向けると遠ざかっていく。

 傍にいた女性はあたしと彼を交互に見渡し、尚志さんの後をついていく。

 久しぶりに会えたのにこんな風に終わるのは嫌だった。

 どんなに冷たくされてもあたしはまだ彼のことが好きだった。

 自分で自分に呆れてしまうほどに。

「待って」

 あたしは叫んでいた。


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