さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 当たり前だ。

 あたしは胸に鋭い痛みを感じていた。

「そうだよね。ごめんなさい」

 あたしはやっとの思いで言葉を絞り出す。

 あたしは何を期待していたのだろう。

 彼が好きだと言ってくれるとでも思っていた?

 そんな素振りをされたことさえもないのに?

 あたしは自分がものすごく滑稽に思えた。

 情けなかった。

「平井さん」

 あたしはその声で我に返る。

 杉田さんと一緒だったことを思い出す。

 あたしは精一杯の笑顔を浮かべて彼に語りかけようとした。

「振られちゃったでしょう? あたしは彼のことがずっと好きだったから」

 自分でそんなことを確認し、目頭が熱くなってきた。

 ばかみたい。
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