さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしはその言葉の意味が分からなかった。

 彼があたしのことをそんな風に意識しているとは思わなかった。

 あたしの脳裏に千春の悲しそうな顔が横切った。

「でも千春が」

 あたしはそこで口をつぐむ。

 確証のないことを彼にここで言うべきではないと思ったからだ。

 あたしを抱きしめる力が一層強くなる。

「彼女とはそんなんじゃない。気が合うとは思うけどそれだけだよ。君だけにはそんな顔をされると辛くなる」

 彼が千春のことを好きなのではないか。

 あたしがそう言うと思ったのだろう。
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