さよなら、もう一人のわたし (修正前)
第二十章 母親の過去
 母親はいつもより遅く返ってきた。少し疲れているように見える。

 彼女は椅子に座ると、ため息を吐く。

「お母さん」

 聞いてはいけないことなのかもしれない。

 そう思っていても知りたかった。

「何?」

 振り返った彼女はあたしを見て、目を細める。何かを悟ったようなそんな表情だった。

「知りたいことがあるの」

「言ってみなさい」

 あたしは母親から目をそらす。

「成宮監督とお母さんが一緒に写っている写真を見たの」

「そう」

 最初から彼女は少しおかしかった。

 彼女はため息を吐いた。

「つきあっていたわ」

< 279 / 577 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop