さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「あなたに聞かれたときの言い訳をいろいろ考えていたわ。でも、正直に言わないときっと納得してくれないわよね」

 彼女はため息を吐いた。

「……私が弱いからよ」

 あたしは何も言えずに母親を見ていた。

「彼に拒絶されるのが怖かった。それに絶対にあなたを産みたかったから彼の傍を離れたの。彼が私を一番に想ってくれているとは思えなかった」

「お母さん」

 あたしは何も言えなかった。

 人はそれを弱さとなぞらえるかもしれない。

 でも相手を好き相手の一番でいたいと想うだろう。

 ちょっとしたことで不安になったりしてしまう。

 あたしがそうだった。

 あたしはあの人とつきあってもいないけれど。

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