さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 杉田さんの手があたしの頬に触れた。

「そんな怖い顔していたらかわいい顔が台無しだって」

「かわいいって、そんなこと」

 よくそんな言葉が出てくるなと思う。

 ある意味、少年のまま大人になってしまった人なのかもしれない。

 子供の頃って、照れもなく自分の気持ちを伝えることができるからだ。

 もちろんお世辞かもしれないけれど。

「だからいつもどおり、平常心でね」

 緊張したあたしをなだめるために言ってくれたのだろう。

 あたしは彼の言葉に頷いた。 

 あたしは不思議と緊張がほぐれていくのが分かった。
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