さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 いつもどおり彼とは接してきたつもりだった。

 でも、今までのように彼の顔を直視することはできなかったのだ。

「どうして彼女を主演に抜擢されたんですか?」

「私は昔の作品に劣ると分かっている作品は撮りたくない。彼女なら昔の作品を超えられると思ったからです」

 何気にすごいことを言ってしまっているような気がするんですけど。

 あたしは何も言えなくなった。

 どうして彼や千春はあたしのことをそこまで買っているのだろう。

 普通の女の子でしかないのに。
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