さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 記者発表の後、杉田さんがあたしに話しかける。

「監督が誰かのことをべた褒めしているのは久しぶりに聞いたかも」

「そうなの?」

「そうそう」

 でもそれはなぜだろう。

 彼があたしを認めているから。

 そう考えるのが一番だとも分かる。

 でも、あたしにはそう思えなかった。

 彼はあたしを憎んでいるのではないか。

 そう思えたのだ。

 あたしに復讐をするために、この映画を準備したとも思えないのだろうか。

 彼はあたしがいなければ、あたしの母親と結婚できたと思っているのかもしれない。

 彼にしたらあたしは憎い男の子供なのだ。

 そしたら千春もグルということになる。


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