さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「あいつは売れっ子作家だったから、金だけはもっていたからな。鍵はこの前千春から借りた」

 今でも生活には困らないという話を尚志さんからも聞いたことがあった。

 確かにこんな建物を買う余裕があるくらいだ。

 その言葉に相違はないのだろう。

「価格帯はそこまで高くないよ。今なら二千万はしないんじゃないか?」

「二千万?」

 そんなお金は別世界の話のような気がした。百万を超えるだけでもものすごい大金だよ思えてくるのに。

 監督はあたしの気持ちに気づいたのか苦笑いを浮かべる。

「でも子供を一人育てるのはそれと同等かそれ以上にお金がかかるんだ。そう考えると、そこまでたいした額でもないだろう?」

「そんなにかかるんですか?」
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