さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしは部屋から出ると、リビングに行くことにした。

 そこでは監督が本を読んでいる。

「何を読んでいるんですか?」

「置いてあったから何かなって思ってさ」

 彼が読んでいた本の表紙をあたしに見せてくれた。

 それは千春のお父さんの本だった。

 本がボロボロになっている。

 置いたまま忘れていたのだろうか。

 同じ本を尚志さんから借りた。

「その本、読みましたよ。なかなか犯人が分からなくてドキドキしました」

「君は推理小説を読むのか?」

「ええ。恋愛ものって恥ずかしいし」

 彼は笑いを堪えているようだった。


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