さよなら、もう一人のわたし (修正前)
第二十三話 夜
 あたしは布団の中で台本を読んでいた。セリフを確認しようと思ったからだ。

 もう暗記してしまったが、念には念を入れておく。

 この話はほとんど果歩と勇の二人で物語が進んでいく。

 彼らが出会い、恋に落ちる。

 果歩は両親がいて、彼らに愛されて育った少女。彼女の両親は彼女の幸せを望んでくれていた。

 でも勇は違った。彼にも両親はいた。でも果歩の両親とは違い、一言も言葉を交わさないような冷め切った家庭の中で育った少年。

 全く違う二人だった。

「美咲」

 あたしの部屋がノックされた。

 あたしを呼んだのは木下さんだった。

 最近、彼女はあたしのことを本名ではなく、芸名で呼ぶ。

「はい」

 あたしは返事をすると、ドアを開けた。
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