さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 季節は六月になっていた。

 六月にもなると、太陽の日差しは強くなってくる。

 さすがに立ち続けていると疲れてきた。

 あたしは天を仰いだ。

「大丈夫?」

 あたしにスポーツドリンクを差し出したのは杉田さんだった。

「大丈夫」

「監督が次のシーンを撮ると言っているけど、撮れる?」

 あたしは頷く。

 次に撮る予定になっているのは少し前のシーンだった。

 あたしが彼との誤解を解いていくシーンだった。

 ちょっとした表情の変化で気持ちを表現しなければならない。

 そんな場面だった。

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