さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「じゃ、あなたは誰に聞いたの?」

 千春は笑顔で文子に話しかける。

「え? あの、いや」

 彼女は口ごもる。

「誰?」

「もう言わないから、忘れるから許して」

「本当に?」

 彼女は頷いた。

 千春はひろみをつかんでいた手を離す。

 彼女は数歩、後ずさりをした。

 千春は唇を軽くかむと、彼女たちを見据える。

「あなたが言い出したのね。そんな低俗なことをする人の気が知れない」

「低俗ってあなたに言われたくなんかない。伯父や親のコネで仕事をもらって、映画にも出て。今回の映画だって本当はあなたで撮る予定だったんでしょう? それなのに」
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