さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 彼女の言っていることは分かった。

 でも、あたしのせいで母親までもが悪く言われることが嫌だった。

 それにどこかであたしは母親のことがあるから、彼はあたしを選んだのではないかと思っていたのだ。

 あたしと母親の若い頃はよく似ていたから。

「あたしはあなたならできると思ったからあなたに頼んだの。

あたしはそんなに甘くないし、その面では情に流されることはない。

だって友達だっていう理由で選んだら、あたしの母親と比べられて傷つくのはあなたなのだから」

 千春は言葉を続ける。

「それに、あなたの母親のことだって、誰もそんな風には思わないわ。だから彼だってとめようとしたのよ?」

 彼女は杉田さんを見た。

 あたしは顔を上げる。

「……ありがとう」
< 343 / 577 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop