さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしをなだめるようにそう言った。

 あたしがシーンを撮り終えて部屋に戻ったとき、千春が口を開いた。

「何か、京香とあいつって兄妹みたいだね。実際は違うけどさ」

 千春がそう言った理由が私には確かに分かる。

「そんな気はするよ」

 ある意味尚志さんよりも近しい気持ちを抱いていたのかもしれない。でもその気持ちは尚志さんに対する気持ちとは全く別物だった。

 彼を思っても辛い気持ちになったことは一度もないからだ。

 あたしは杉田さんの後姿を見つめる千春の横顔を見た。

 夕焼けに照らされた彼女の横顔はどこか寂しそうに見えた。

 あたしがあの人の子供だと彼女が知ったら、彼らはどうするのだろうか。

 あたしを軽蔑するのだろうか。

 それとも同情するのだろうか。




 そして、本当に、彼は「あたし」を選んでくれたのだろうか。
< 345 / 577 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop