さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 「聞かないの?」

 十分ほど歩いたとき、千春が口を開いた。少し突き放すような冷たいような口調だった。

 彼女がどれほどいらだっているのが分かる気がした。

「何が?」

「あの男と何を話していたとか」

「聞かれたくないのかな、と思ったから」

 あたしの言葉を聞いて、千春が寂しそうに微笑んだ。

「あなたには次の日曜日に話をする予定だったのよ。どうせ、いずれ知られることだから」

「あたしに関係あることなの?」

「伯父さんが気に入れば、ね。兄もそう思っているからあなたを伯父に合わせようとしたのだと思うわ」

「伯父さんって何をしている人なの?」

「一応映画監督だけど、無職のような生活を送っているかな」

「映画って映画?」

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