さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 そのままゲームセンターの軒下までつれてきてくれた。

「こんなに濡れて」

 彼の手があたしの頭の水滴を払う。

「少しでも彼女の気持ちが理解できないといけないと思って」

 ただ演技ができるだけじゃだめなのだ。

 きっと誰もかもを納得できるくらいの演技をしないとやっていけない。

「誰も君と彼女を比較したりしないだろう? 君は君の果歩を演じればいいんだよ。だいたいかぜを引いたらどうする?」

「ごめんなさい」

 彼の言うことは正論だった。

「とりあえず、早く着替えないと。木下さんに迎えにきてもらおうか」

 あたしは頷いた。



 彼女はすぐに迎えに来てくれた。

 びしょぬれのあたしを見て、もちろん彼女はあたしを怒っていた。







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