さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしは彼を見た。

「君は君だよ。千春のお母さんが上手くやっていけなかったとしても、君は成功する可能性だってあるのだから」

「分かっているけど、でも」

 あたしには分からなかった。

 あたしの幸せが何か。

 あたしはこの世界でやっていけるのか。

 分からなかったのだ。

「もし、君がやりたいなら大丈夫だよ」

 そう言って杉田さんがあたしを抱き寄せた。

「濡れるよ?」

 あたしの胸が高鳴る。

 水を含んだ髪の毛が杉田さんの顔に触れた。

「濡れたら拭けばいいからさ」

 彼は言葉を続ける。

「君なら大丈夫だよ。僕は君だから、この映画に出ようと決めたんだ」

 彼は元々やる気がなかったと聞いたことを思い出す。
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