さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「今まで黙っていたけど、君を見たとき、君と一緒にやりたいって思ったんだ」

「そんなこと」

「そう思わなかったら、僕は今、ここにいないから。それくらい君は魅力的だったんだ」

 彼は穏やかな口調で言葉を続ける。

「君は周りばかり認めて自分を卑下しすぎだよ。君じゃなかったら、僕はもう一度、映画に出たいなんて思わなかったから」

 あたしの迷い。弱さ。辛さ。

 どうして彼は気づいてくれたのだろう。

 一緒にいる時間が長いからかもしれない。

 彼には何でも言えそうな気がしたのだ。

「ありがとう」

「これから先は、君が選べばいい。でも、この役は君以外ありえない。少なくとも僕はそう思っているから」


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