さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 「この映画、見たんだけどさ」

 千春が久しぶりにやってきた第一声がそれだった。

 彼女の手には映画の半券が握られている。

「あ、もしかして弘と行ったやつ?」

「そう。見た後、呆気に取られちゃった。すごく幕引きが強引で」

「そうなんだ」

 弘は前もって映画のことを調べておけばよかったのに。

 千春は映画にはうるさいタイプだとは思ったからだ。

「でも、楽しかったことは楽しかったけどね」

 千春は満足そうにそう言ったのだ。

 あたしは首をかしげる。

「映画が? つまらなかったって」

「武田くんといろいろ話せて。かなり彼のことを誤解していたなって」

「そうなの?」

「すごい軽い人なのかと思ってた」

 弘が聞いたらショックを受けそうな言葉だった。
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