さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 千春は彼のことを好きなのではないか。

 そんな気持ちが心の中を過ぎる。

 でも、彼女に嘘を吐くのは嫌だったのだ。

 あたしは正直に自分の気持ちを伝えた。

「好きかな。恋愛感情かは分からないけど」

「そうなの? よかった」

 明るい千春の笑顔。

 彼女は何も気にしていなさそうだった。

 千春が杉田さんを好きだと思ったのは、あたしの勘違いだったのだろうか。

「じゃ、これでばっちりだよね。結構心配しちゃった。突然できないとか言い出すんじゃないかってね」

「なにが?」

「キスシーン。もう少し後だけど」

「あ」

 忘れていた。もちろん、そんなシーンがあるのは分かってはいたけど。綺麗に頭から消え去っていたのだ。
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