さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「どうかしたのか?」

 しばらく経って彼がやってくる。あたしは彼の気配を感じつつも顔を上げることができなかった。

「京香が一緒に出かけたいってさ。じゃあね」

 彼女は有無を言わさず、そう言うと、その場から足早に去っていく。

 その場にはあたしと杉田さんが残されていた。

「千春には困ったものだよな。昔からいつもあんな感じで」

「あんな感じって?」

 あたしは千春という名前に促されるようにして、彼に問いかけた。

「人をすぐくっつけたがるんだよな。僕が被害に遭ったことは今までないけどさ」

 なんとなく、彼の言っている意味は分からなくもない。

「よかったら一緒に散歩しない?」

 彼と一緒にいたいと思う気持ちは嘘ではなかった。

 あたしは彼のことをもっと知りたい。

 そう思っていたのだ。


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