さよなら、もう一人のわたし （修正前）

　彼女はこの映画に出た後、一本のＣＭに出た後姿を消したのだ。

　その前には同じ監督の映画に数本出ていたはずだ。その監督の名前は確か成宮秀樹といったはずだ。

　成宮？

　あたしはその苗字を思い出して、千春を見た。

「成宮って監督の娘？」

「違う、違う。それは伯父さんだよ。でもお父さんもかなりの年でかなり歳の離れた父親だったけどね」

　彼女が言っていた映画監督の伯父というのは成宮監督のことだったのか。

　しかし、あたしの興味を惹きつけたのはそれだけではなかった。

　彼女の父親は母親のために書いたと言っていた。

　もしかすると読ませるために書いた本なのかもしれない。しかし、そうでもないかもしれないと思いつつもある。そうでなければ考えられる答えは一つしかなかった。

「高木水絵さんが千春のお母さんなの？」