さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしたちは人気のない山道を分け入っていく。こんなところで声を出すと、それだけでも響きそうだった。

「怪我はしないようにね」

「分かっている」

 季節は夏でとてつもなく暑い。体中から汗が噴出してくるのが分かる。

「大丈夫?」

 彼は心配そうにあたしの顔を覗きこむ。

「大丈夫だよ」

 あたしたちは見晴らしのいい丘まで来ると足を止めた。

 そして、そこから見える世界をただ眺めていた。

「こういうところに来るのって初めてだから楽しくて」

「ずっとあの家に住んでいたの?」

 あたしは頷く。

「僕は中学、高校は母親の田舎で過ごしたから、こういうところってあまり目新しくもないからね」

「そうなんだ。妹さんの関係で?」

「それと父親もその辺りに転勤になったからね」





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