さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「なんか映画の設定みたいだね」

 杉田さんはあたしの言葉を聞いて笑う。

「家はどんな感じ?」

「普通かな。家族の仲はいいほうだとは思うよ。君の家は仲がよさそうだよね」

「そうだと思うよ。楽しかったから。あたしはお母さんの子供で産まれて幸せだったから」

「君のそんなところが本当にすごいと思うよ」

 あたしはその声に杉田さんを見た。

 彼は優しく微笑んでいる。

「人って、他の人のことばかり羨ましがるのに、君は自分で自分の幸せを気づいているから。だから、君に惹かれたんだと思う」

 あたしは彼の顔を見た。

 彼は照れた素振りもなく、明るい笑顔を浮かべていた。

 あたしの何倍も彼のほうがすごいのに。

 あたしは首を横に振る。

 あたしが彼のことを好きかどうかは分からない。

 でも、今、こうしていられるだけで十分幸せだった。

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