さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「尚志さん?」

 その名前を口にした途端、今まで忘れていた胸の痛みが蘇る。

 あたしは唇を噛み締めた。

 どうして、彼がここにいるのかあたしには分からない。

 あたしは自分の息が荒くなるのを実感していた。

 でも、何も言うことができなかったのだ。

 彼はあたしと目が合うと、目をそらす。彼の視線は妹に向けられていた。

「昼過ぎに電話がかかってきて、俺の家に来るって言っていたから迎えに来たら、倒れていて」

 彼はあたしが理由を聞きたがっているのが分かったのだろう。そう告げたのだ。

 あたしの意識が千春に戻る。

 あたしは何を考えていたのだろう。

 親友が倒れていたというのに。

 さっきまで普通に見えたのに、いつ、彼女は体調を崩していたのだろうか。

「お医者さんには?」

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