さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 千春はゆっくりとした口調であたしを見た。

 彼女は優しく微笑む。

「だから勝手に移動しようとしたの。京香に迷惑かけたくなかったから」

「ごめんね」

 彼女はあたしのためにいろいろしてくれたのに、あたしは彼女が体調を崩しているときさえ、何もできないのだ。

 あたしは無力だった。

「お大事ね」

 本当は少しでも千春の傍にいたい。

 でも、彼女の優しさを無視するようなことはしたくなかったのだ。

 あたしは尚志さんに頭を下げると、その場から立ち去ろうとした。

「千春?」

 優しい声が部屋の中に響き渡る。

 あたしが扉を開けっ放しにしていたので、不思議に思ったのだろう。

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