さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 杉田さんが、部屋の中を覗いた。

 彼はあたしと目が合うと、そのまま視線を盛り上がったベッドに向ける。

「どうかしたのか?」

「夏風邪だと思う」

 そう返事をしたのは尚志さんだった。

 杉田さんは彼に頭を下げると、千春の傍に歩み寄ってきた。

「大丈夫? 食欲は?」

 千春の表情が少しだけほころぶのが分かった。

 あたしは首を横に振る。

 弘とデートして彼のことを見直したと言っていた。彼女自身、杉田さんのことを忘れようとしていたのかもしれない。

 やっぱり、千春はそれでも彼のことが好きなのだ。あたしはそんなことに今更気づく。

 あたしは彼女の望みを叶えてあげたかったのだ。彼女は小さなときから彼のことが好きだったのかもしれないから。

 あたしの何倍も辛い思いをしてきたと思ったからだ。


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