さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「そう。分からなかった? 結構お母さんにそっくりって言われるのだけど」

「全然分からなかった。言われたら似ているかもしれないけど」

「言われたら似ているってことは実はあまり似ていないってことでしょう?」

 千春は壁にもたれかかると、寂しそうに微笑んだ。

 その物憂げな瞳を見ていると、心の奥が軽い痛みを感じる。

 もしかすると千春は彼女の娘ということで悲しい思いをしたこともあったのかもしれない。

 人の中には人を利用しようとしている人も多い。

 千春を利用して彼女の母親と仲よくなりたいと考えている人がいてもおかしくないのだ。

「おどろいた?」

「かなり」

 あたしは千春にどう話しかけていいか分からなかった。

「あの、水絵さんは?」
< 42 / 577 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop