さよなら、もう一人のわたし (修正前)
第三十一章 忘れられない記憶
 あたしの部屋がノックされた。

 あたしは扉を開ける。

 そこに立っていた人の姿を見た。

 あたしが千春の部屋から出て一時間が経過していた。

「ちょっといい?」

 あたしは目の前の彼を招きいれた。

 あたしの部屋にやってきたのは尚志さんだった。

 彼はあたしの部屋の中に入ると、行く先が分からないのか、部屋の中央にぽつりと立つ。

 あたしは扉を閉めた。

「何か?」

「千春のことなんだけど」

「あ、はい」

 彼の話は九割型がそうなのだと分かっていたので、別に驚きはない。

「今日、やっぱり家に連れて帰るから」

「分かりました。彼女のことをよろしくお願いします」


 彼はあたしを見て、口を開いたが、何も言わずに口を閉じた。

「どうかしましたか?」

 あたしは深い意味もなく、そう尋ねた。
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