さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「千春は彼のことが好きなのか?」

 多分、気になったのだろう。

 千春のことが大事だから。

「それは本人に聞いてください。あたしが言うのもおかしいですから」

 でも、聞く必要もなく、分かっていたと思う。

「そうだな。悪かった。でも、あいつも君と同じなんだろう?」

 彼はあたしの背後にある窓に目を向けた。

「同じって」

「俳優になりたいのだろう?」

「分かりませんけど、多分そうなのだと思います」

 彼も複雑な事情があるのは知っているので、一言では言えなかった。

 でも、それを尚志さんに説明する必要はないと思ったからだ。

「君たちはすごいよな」

 あたしは顔を上げた。




< 427 / 577 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop