さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「亡くなったよ。今から十年前にね。アルバム見る?」

 千春は本棚に手を伸ばす。

 あたしが彼女のファンだと知っていて気をつかってくれているのかもしれない。

「無理に見せなくてもいいよ」

 あたしは慌てて、千春にそう告げた。

「もしかして、あたしに気を使っているの?」

 千春は眉間にしわを寄せ、あたしの顔を覗き込む。

「なんか千春を利用したみたいにならないかなって」

 そのとき千春の人差し指があたしの額をつついた。

 あたしは思わず額を押さえて後ずさりした。

「何?」

「お母さんは女優といってもほとんど名前も知らない人ばかりだし、たいして嫌な思いはしなかったよ。たまには利用して近づこうって人もいたけど、人ってそんなものでしょう?」

 彼女はあたしの心を見透かしたような言葉を告げた。
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