さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 あたしは伝わってくる彼のぬくもりをただ感じていた。

 ずっと好きだった。

 この人のことが。

 その気持ちはどんなに頑張っても消えてくれることはなくて、しつこく心に残っていた。

 あたしは一生彼を忘れられないのかもしれない。

 もう一年以上経つのに、何度忘れたと思っても彼のことは忘れられなかったから。

「俺がこんなことしても拒まないんだ」

 彼は押し殺したかのように言葉を繋げる。

「それは尚志さんだからですよ」

 あたしはやっとの思いでそう告げた。

「好きな人とじゃないとやっぱり嫌だし、でも仕方ないから。キスだって最初くらいは好きな人としたいとはずっと思っていました」

 それは紛れもない本心だった。
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