さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 彼の柔らかい髪があたしの首に触れる。

 でもあたしはその感触を感じながらも何も言うことができなかった。

 静かな部屋の中に押し殺したような声が響き渡る。

「君は君の人生を歩めばいい。俺のことなんてすぐに忘れるから。君のことを何でも受け入れてくれる人を、想ってくれる人を好きになったほうがいい」

 さっきあたしを見て、皮肉っぽい笑みを浮かべた人の言葉だとは思えなかった。

 もし、このときあたしが彼の顔を見ていたら、これから先の未来が少し変わっていたのだろうか。

 それは今でも分からない。

「あたしは」

 そのとき、あたしの部屋の扉がノックされた。

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