さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「はあ? なんであんたと」

「来るわよね?」

 木下さんが尚志さんの手を力いっぱいつかむのが分かった。

「分かったよ」

 抵抗しようと思えばできたけど、しなかったのだろう。

 彼はそのまま木下さんに連れて行かれる。

 あたしは唖然と空いたドアを見ていた。

 一体なにが起こったのか分からない。

 今までの経緯をゆっくりと思い出す。彼があたしを軽蔑していることだけは分かった。

 それならどうして、最後に優しい言葉をかけようとしたのだろうか。

 もしかすると、二度と自分を関わらせるなとでもいいたいのだろうか。

「京香?」

 弱々しい声が辺りに響く。

 あたしが顔を上げると、千春が部屋を覗きこんでいた。

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