さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「大丈夫? 起き上がったらだめだよ」

 彼女はあたしの元に駆け寄ってきた。

「あたしは大丈夫だよ。どうしたの? 何かあった? 木下さんとお兄ちゃんの声が聞こえたけど。またお兄ちゃんに何か言われた?」

 あたしは彼に言われた言葉を思い出す。でも、千春にはさすがに言えない。

 あたしは彼女の三番目の問いに答えることにした。

「木下さんが尚志さんに何か話があるって」

「ええ? どうしてお兄ちゃんがここにいたの?」

「千春を連れて帰ると教えに来たの」

「そうなんだ。でも、お兄ちゃんが京香にひどいことを言わなくてよかった。木下さんも無理にお兄ちゃんを連れて行くことはないのにね」

 千春は困ったように肩をすくめる。

「熱、大丈夫?」

「大丈夫だよ。でも、早めに移動しようとは思う。京香に移したくないし」

 彼女は大きな瞳であたしの目を見つめる。

 千春は何かを察知したのだろう。そのまま扉のところに戻り、扉を閉めると、もう一度あたしの傍まで歩み寄ってきた。

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