さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「でも、あなたがお兄ちゃんのことを好きだと分かったとき、まずいって思ったの」

「まずいって?」

「お兄ちゃんは演技でも人とキスしたり、そういうシーンとかする人のこと嫌いだって分かっていたから」

 彼の瞳のことを思い出していた。

「京香は多分、嫌でもするでしょう?」

 あたしは頷いた。

 だってそれは仕方ないから。

「でも、お兄ちゃんの京香に対する態度を見ているとね、相手が京香なら受け入れてくれるかもって思っていたの。

でも、それは甘かったって分かった。お兄ちゃんは映画の話が決まった辺りから露骨に避けだしたでしょう?」

 そういえばそうだったのかもしれない。

 あたしのことが嫌いになったわけではなくて、あたしが映画に出ることになったから避けるようになったのか。

「でも、最初は普通だったのに」

 それなら最初から無視しておけばよかったのに、とは思う。





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