さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「多分、お兄ちゃんがさ、京香のこと好きになったからだと思う」

「好きに?」

 そんなことあるわけない。だってあたしを軽蔑するためにあんなことをしたのだ。

 あたしは思わず唇に触れた。

「だって、好きでもない人が誰とキスしようが気にならないでしょう? でも、それが自分の好きな人ならやっぱり気になると思うから」

 彼女はそこで息を吐く。

「お兄ちゃんはね、好きでもない人にキスしたり、抱きしめたりはしない人だと思う。そういう意味では潔癖症で、好きでもない人の手とかも握れないくらいだから」

「でも」

 彼はさっきあたしを抱きしめて、キスをしていた。

 それは。

 あたしは千春を見た。

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