さよなら、もう一人のわたし (修正前)
第三十五章 水族館
 あたしは一週間の休みをもらった。そのため、久しぶりに家に帰ることになったのだ。

 母親とは電話で何度か話をしただけで、三カ月ぶりの再会でもあった。

 あたしは千春から渡された家の鍵で、鍵を開けた。

 千春は母親から預かってきたらしい。そのため、あたしが母親に休みのことを告げるよりも早く、彼女はあたしの休みを知ることになったのだ。

 久しぶりの家はなんだか懐かしい。

 あたしは鍵を内側からかけると、ほっとため息を吐いた。

「京香?」

 廊下の奥から声が聞こえた。

 あたしが顔を上げると、そこには三カ月前と変わらない母親の姿があった。

「お母さん」

 あたしは彼女のもとに駆け寄る。

「元気だった?」

「元気よ。この前は洋服を送ってくれてありがとう」

< 459 / 577 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop