さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「うんん。サイズとかは?」

「ぴったりだったわ。でも、大丈夫? ゆっくり休む?」

 あたしは頷いた。

「何か嫌なこととかなかった?」

「大丈夫よ」

 母親は笑顔を浮かべる。

 あたしは成宮監督のことを母親に言おうか迷っていた。

 でも、彼女の以前と同じ笑顔を見ていると、あたしは触れるのを止めた。

 世の中には知らないことがあるということも分かったからだ。彼女は知らなければ、今と変わらない人生を送れる。

 だから、彼女の心をこれ以上掻き乱したくなかったのだ。

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