さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 「そういえば、これをもらったけど、京香ってこんなもの好きだったわよね?」

 家に帰って二日目に母親が差し出したのは水族館のチケットだった。

 そのチケットを見て、あたしの胸がどくんと鳴る。

 それは尚志さんと一緒に行った水族館のチケットだった。

「どうしたの?」

「知り合いが一枚だけもらってもって」

 確かにそうだ。こういうところは一人で行くのではなくて誰かと行くから楽しめると思ったのだ。

 一人で行くのが好きな人もいるだろうけど、あたしはそんなタイプではなかった。

「お母さんも一緒に行く?」

「でも仕事休めないから」

 せっかくの休みに人が多いところに行く必要もないだろう。

「そっか。それならあたしが行ってくるよ」

 チケットをムダにするのも悪いと思ったのだ。

 だからあたしは翌日、一人で水族館に行くことになったのだ。
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