さよなら、もう一人のわたし （修正前）
　二年前、あたしはこの場所に尚志さんといた。それがずっと、まるで子供のときのできごとのように昔のことに思えた。

　着慣れないだぼっとした洋服はいつものあたしとは違って、別人のようにも見える。

　千春に変装をしていったほうがいいかと一応尋ねたら、彼女が言うにはそんなことをしているほうが怪しいと言っていた。

　確かに帽子にサングラスなんて格好をしていたら確かに目立つかもしれない。

　それに、あたし自身、テレビにも出ていないし、そんなに知名度があるわけでもないので、大丈夫だろうとのことだった。

　気になるならカツラでもかぶればいいと、カツラを貸してくれた。染めたような明るい茶色の髪をしたカツラだった。

　母親の持ち物なのか、伯父の持ち物なのか、彼女はいろんなものを持っている。

　あたしは千春の持ってきてくれたカツラをかぶると、確かにそれだけで雰囲気ががらっとかわり、別人のように見える。

　でも違和感がありすぎたので、それは借りないことにしておいて、普段着ないようなう洋服を千春から借りることにしたのだ。

　ジーンズに五分袖の襟のラインにギャザーが入っているベージュのシャツという服装だった。

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